室蘭市3病院再編に係る大川原脳神経外科病院の
脳神経外科としての現状について(2)

重症救急受け入れ件数の問題点

前回、当院の状況をホームページに記載したところ、医療関係者の方より、「市立室蘭総合病院は脳神経外科領域の重症患者の搬送を受けて診断・治療を行っている一方で、大川原脳神経外科病院は比較的軽症の患者を多く受けているため、今後、現在以上に脳神経外科患者の搬送受入れを担うことは難しいのではないか」とのご意見をいただきました。

そこで、まず「重症患者」とは何かを確認する必要があります。総務省消防庁の「令和6年版 救急・救助の現況」では、重症(長期入院)とは「傷病程度が3週間以上の入院加療を必要とするもの」とされており、傷病程度は初診時における医師の診断に基づいて死亡、重症、中等症、軽症等に区分されています。

室蘭三病院における重症救急受入件数のグラフより

当院が参照している室蘭三病院における重症救急受入件数のグラフでは、市立室蘭総合病院の重症受入件数が他院より多く表示されています。もっとも、この「重症」の集計は、あくまで搬送時点における初診時判断に基づく統計であり、その数値のみをもって各病院の実際の医療機能や、継続的に受け入れている患者の重症度を単純比較することには慎重さが必要であると考えます。

・重症患者と平均在院日数の関係

DPCとは、急性期入院医療の実態を、診断群分類と在院日数に基づいて評価する診療報酬制度です。
救急搬送時の重症割合を評価する際には、初診時の分類結果だけではなく、退院後に確定する客観的指標と突き合わせて検証することが重要です。その代表的な資料の一つがDPCデータです。DPC制度では、平均在院日数のほか、患者構成を調整した「効率性指数」などを用いて、各医療機関の診療実態を比較する仕組みが整備されています。
すなわち、救急搬送時に「重症」と分類された患者数が多いという事実だけで、直ちに当該医療機関が他院より高度な重症患者を一貫して担っていると評価することはできません。脳神経外科領域、とりわけ脳梗塞などの患者については、急性期治療後の転院、転棟、回復期リハビリテーション病棟への移行の有無によって平均在院日数が変動し、病院ごとの患者の滞在構造にも差が生じます。そのため、重症件数とDPC平均在院日数、転院・転棟の実態などを合わせて見て初めて、各病院の役割をより正確に評価できるものと考えます

以下に、脳神経外科領域で患者割合の大きい脳梗塞の内科的治療を行っている病院について、DPC令和5年資料に基づく在院日数比較表を掲載します。

また、市立室蘭総合病院については、公式案内上、回復期リハビリテーション病棟を令和6年3月に開設しており、同院の脳神経外科領域の患者動向を検討する際には、急性期のみならず、回復期リハビリテーション病棟を含めた入院構造も踏まえて分析する必要があります。
この点を踏まえると、西胆振地域における脳神経外科領域の議論においては、救急搬送時の重症件数のみを根拠に各病院の機能を評価するのではなく、DPCデータ、平均在院日数、転院・転棟の状況、回復期リハビリテーション病棟の有無などを含め、総合的に検証することが必要であると考えます。

・将来的な脳外科領域の地域医療とは

そのため、西胆振全体で、来年度より適切な重症患者数の分析を行い、適切な転院や自院回復期への転棟などが実施されているかを調査し、脳神経外科領域における実態の分析を進めていくべきであると考えております。

1 透析患者の脳卒中
2 低体温を伴う脳卒中
3 多発外傷(骨盤骨折等を合併したもの)を伴う脳卒中

これらは、今後の病院再編や統廃合の議論に先立って、地域連携の中で解決すべき脳神経外科領域の重要課題であると考えております。特に、救急搬送後の受入先の整理、合併症を有する脳卒中患者への対応体制、急性期から回復期までを見据えた病院間連携のあり方については、地域全体で実態を分析し、役割分担を明確化することが必要です。

当院としては、数年前より室蘭市並びに室蘭市長に対し、こうした地域連携と分析の必要性を提案してまいりましたが、現時点において十分な協議や検討が進んでいるとは言い難い状況です。来年度には、今後の体制について具体的な話し合いを進め、地域として解決すべき課題を明確にしていく必要があると考えております。

医療法人社団医修会
大川原脳神経外科病院
理事長 大川原 淳